CASES
導入事例
  • ホーム
  • >
  • 導入事例
  • >
  • 浮体式洋上風力 曳航と係留の最適解~DPS曳航支援技術によるプロジェクト成功への貢献
浮体式洋上風力 曳航と係留の最適解~DPS曳航支援技術によるプロジェクト成功への貢献

浮体式洋上風車の需要の急増は、Kongsberg Maritime社に大きなビジネスチャンスをもたらしました。同社の技術は、信頼性が高く持続可能な大規模インフラプロジェクトの推進に寄与します。

世界的にクリーンエネルギーへの需要が高まる中、大規模な洋上浮体式風車の開発が急速に進展しています。多くの国がこの先進技術への積極的な投資表明をしており、この分野は今後、さらなる成長が見込まれています。Kongsberg Maritime社は、洋上風力発電プロジェクトに向けた最先端ソリューションを提供することで、こうした市場の拡大に貢献しています。次世代の洋上風力発電所では、50基以上の大型風車が設置されるケースも想定されており、陸上から数十マイル離れた海域での大規模インフラ整備は、機器・技術の供給企業にとっても重要な課題であり、同時に大きなビジネス機会でもあります。

巨大な風車の洋上輸送および設置作業は、極めて複雑かつ困難なオペレーションであり、今後の需要増加に伴い、効率的かつ迅速な輸送手段の確保はプロジェクトの成功を左右する重要な要素となります。
Kongsberg Maritime社は、世界中のオフショア企業に高度なダイナミックポジショニング (DP) システムを供給してきた数十年にわたる経験を活かし、評価の高いK-Pos DPシステムを強化する新技術を開発しました。これにより、複雑な曳航および位置決めの操船作業において、動力のない浮体構造物をDPに適応させることが可能となります。

2024年夏、北海において実施された実証試験において、Kongsberg Maritime社の新たな「Tow Assist System(曳航支援システム)」は、その有効性と信頼性が確認されました。
本システムは、2025年より商業展開が予定されており、これにより、従来は高い技術力と経験が要求された大規模な曳航作業を、より効率的かつ安全に実施することが可能となります。
今後の洋上風力発電所建設やオフショアインフラ整備において、運航リスクの低減と作業効率の大幅な向上が期待されています。

250308 KM INSIIGHT POSITIVE ENERGY P30001
位置および方位に関するリアルタイムデータに加え、スラスターおよびウィンチの状態情報が、曳航支援システムのマスターコンピューターへワイヤレスで送信されます。

ソリューションの中心となるDP

「ノルウェー、英国、中国、フランスを含む多くの国が浮体式洋上風力発電への大規模な投資の計画を推進しています」と、Kongsberg Maritime社のアフターマーケット・セールス・マネージャー、マルティヌス・ローケン氏は言います。
「これにより、風車および浮体構造物(水中部分を含む)の製造が大規模に拡大されます。これらは非常に巨大であり、これまでとは比較にならないほど大量にそれらを現場へ輸送・設置することは、極めて大きな課題となるでしょう。さらに、このような作業を年間を通じて継続的に行う必要があることも加味すると、我々はまったく新しい作業プロセスに取り組むことが求められています」

ブレード、発電機、タワー、そして水中の浮体構造を含む風車全体が、一体となって数百マイル沖合の設置海域まで輸送される予定です。
マルティヌス氏は次のように続けます。「私たちは、提供可能なソリューションの検討を行い、複数の風力発電事業者からのフィードバックにも耳を傾けてきました。その中で、完成した風車の曳航は、特に今後、これまでにない規模で輸送量が増加することから、主要な課題として頻繁に議論されています」
DPシステムのリーディングカンパニーとしての同社の技術は、この新しい市場において自然な選択となりました。DPは、重要なオペレーション中にスラスターを自動制御し、船舶の位置や方位を保持する機能を提供します。新しい曳航支援システムは、動力を持たない浮体構造物に独自のDP機能を付与し、複数の曳航船と連携した統合オペレーションを実現することを目的としています。

マルティヌス氏は続けます。「浮体式風車は巨大で動力を持たない構造物ですが、その位置を正確に管理することが非常に重要です。そのため、風車本体に一時的なポジショニング機器を搭載し、DPシステムを備えた曳航船とワイヤレスで接続する仕組みを導入しています」

DPS曳航の実証試験
洋上風力浮体構造物には、角度・方位・位置を測定するためのセンサーを設置し、リアルタイムの位置情報を取得しました

「私たちは基本的に、浮体構造物に対して分散型DP操作を提供しています。浮体構造物と接続された複数の曳航船の位置を測定し、その情報をもとに、正確なポジショニングのためのモデルを構築します。
これにより、係留作業や制御された航路に沿った移動を高精度で実施することが可能となります。
位置および方位のリアルタイムデータ、さらにスラスターとウィンチの稼働状況は、先導船に設置された曳航支援マスターコンピューターにワイヤレスで転送されます。その後、接続された船舶(理想的には3隻)が、浮体構造物のスラスターの役割を果たし、すべてが一つの統合されたシステムとして連動、実績あるDPテクノロジーによって制御され、統一された動きを実現します」

従来、このような曳航操作は、先導船から他の曳航船へ、無線による音声指示で行われていました。曳航支援システムは、3隻の曳航船と浮体構造物の状況をリアルタイムで共有し、各船舶の乗組員が互いの位置を確認しながら安全かつ効率的に作業を行うことを可能にします。

マルティヌス氏は次のように続けます。「このアプローチは、アンカーの取り付け、いわゆる『フックアップ』のために浮体構造物を正確な位置に移動させる際に特に有効です。しかし、私たちはこのシステムが、沿岸から設置海域までの全行程においても活用されるべきだと考えています。今後、こうした構造物の輸送は世界中のさまざまな地域で増加することが予想され、海上交通や航行上の障害も地域によって異なります。そのため、曳航作業のあらゆる工程においてこのシステムを活用することで、全体の効率と安全性を高めることができます。
また、複雑な曳航作業に対応できる船舶や乗組員の能力も地域によって異なるため、このシステムは標準的なアプローチとして大きな価値を提供します」

曳航の実証試験

2024年夏、Kongsberg Maritime社は、スコットランド・アバディーン沖に位置する浮体式洋上風力発電所「Hywind Scotland」において、曳航支援システム(Tow Assist System)の能力を実証する試験を成功裏に実施しました。Hywind Scotlandは2017年に運転を開始した、5基の浮体式洋上風車から構成されるパイロットプロジェクトで、合計30MWの電力を供給しています。

徹底的なメンテナンスのため、各風車をノルウェーのスロヴォーグ港まで曳航し、風車の重整備後に再び風車を戻す作業が行われました。

「5基目のタービンを移動する際には、センサー機器を設置し、3隻のうち2隻の船舶にK-Pos DPシステムをアップグレードしました」とマルティヌス氏は言います。「試験では、3隻すべてにシステムを搭載設置する必要はありませんでしたが、商用運用においては、3隻全てにシステムを搭載することで、オペレーションが最適化されます」

試験で使用された船舶は、「Skandi Vega」 (K-Pos、曳航支援マスターユニット、および曳航作業指揮者を乗船させた先導船)、「Normand Ferking」 (K-Pos、曳航支援ユニット搭載)、および 「Normand Sigma」 (K-Posなし、手動制御) でした。

「洋上風力浮体構造物には、角度・方位・位置を測定するためのセンサーを設置し、リアルタイムの位置情報を取得しました。現場海域に到着後に、システムを作動させると、曳航作業指揮者が曳航支援システムを介して「Skandi Vega」と「Normand Sigma」の方位を制御できるようになりました。この曳航支援システムは自動的に両船舶の推進装置を制御して風車の位置決め作業を支援し、技術的な観点から見て、このシステムが完璧に機能することを実証しました」

曳航支援システムを導入することによる主なメリット

曳航支援システムを導入することによる主なメリット

・世界各地での船舶運用の最適化オペレーション
・全体的な効率の向上
・風車の「係留・接続」作業における気象条件の対応可能時間の拡大
・リアルタイム状況認識(シチュエーショナルアウェアネス)の向上
・燃料消費の削減
・作業全体の安全性向上

Kongsberg Maritime社は、洋上エネルギー産業の発展を支えるための最先端技術とソリューションを提供しています。