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  • 巨大な洋上風力発電プロジェクトを担う最新鋭のCSOV 安全で効率的な海上施工に不可欠なDPシステム

スカイウォーカー、見参。

革新的なこの船の名は、SF映画の大作、スター・ウォーズの英雄を思わせますがフィクションではありません。洋上風力発電業界に現代的で柔軟なソリューションを提供するKongsberg Maritimeが設計を手掛けた作品のひとつです。

エネルギー効率の高い船舶の世界に、IWS Skywalkerという新たなフォースの覚醒です。
この船は、洋上風力発電施設の建設や保守作業を支援する6隻の同型CSOV(洋上風力発電所の建設支援船)の1番船です。北海で運用が開始されたこの船は、Kongsberg Maritimeによる最高水準の設計と装備で建造された非常に誇らしい一隻となっています。

この船は2023年末に所有者に引き渡され、紅海危機の影響により喜望峰を迂回して中国からヨーロッパへの処女航海を終えました。UT 5519 DE型として設計されたこの船は、銀河系の遥か彼方で運用されるわけではなく、イングランド北東部のハートリプールを拠点とし、北海のドッガーバンクウインドファームでその運用を開始しました。デンマークで最初の配備に向け出航準備をしているアントン・カバレル船長とそのクルーにインタビューを行いました。

Captain Kavaler

中国からヨーロッパへの航海に加わったカバレル船長は、この船の能力を高く評価しています。「非常に優秀な船です」と彼は語ります。「IWS Skywalkerには、Kongsberg Maritimeのアジマススラスターが4つ装備されています。これは推進システムの新しいコンセプトで、船首と船尾の両方に同じ推進装置を備えています。

このダブルエンド型の設計は、ダイナミックポジショニング(DP)やウォーク・トゥ・ワーク(船と洋上施設との作業員の移動支援)に理想的であり、風車から風車へのポイントの移動を迅速かつ安全に行うことを可能にします」

「この船の効率性は他に類を見ない」とカバレル船長は更に語ります。「この船は、Tier 3(IMOが定める第3次NOx排出規制)に対応したエンジン3基と北海のCSOVの中で最大容量となる2.2MWhのバッテリーパックを搭載しています」

この船舶の主要な特長の一つがKongsberg MaritimeのDPシステムです。「DPシステムにより、完全自動モードで船をある風車から別の風車に移動することができます」

「オペレーターは5基から10基程度の風車の座標を設定するだけで、船は自動的にA地点からB 地点、そして必要なすべてのポイントに移動します。非常にシンプルで効率的なソリューションです」カバレル船長は語り続けます。

「Skywalkerのエネルギー消費は、Kongsberg Maritimeのオートメーションシステムにより非常に安定しています。熟練したオペレーターであっても、一瞬でも集中力を失えば、常に安定した負荷を維持することはできません。しかし、このオートメーションシステムはそれを可能にします。非常に優れたシステムです」

本船は、IWSによって適切な人員体制が組まれており、DPの操作やギャングウェイ、クレーンの操作には、常に2名の訓練を受けたオペレーターが担当しています。また、各ミッションの前には、すべてのシステムが正常に機能していることを入念にチェックし、万全の状態で作業に臨みます。

IWS Skywalkerとその姉妹船は、120名の乗員を収容でき、IMOの特殊目的船コード(SPSコード)に認定されています。また、2024年の夏からは、SOLAS(海上人命安全条約)の新規則のもとで運用される予定です。

CSOVの新時代を切り拓くIWS Skywalker、 IWS船隊に搭載された最新鋭の技術は、洋上風力発電業界の急速な成長を象徴するものです。「最初はまるでスター・トレックの宇宙船エンタープライズ号のようでした」とカバレル船長は当時を振り返ります。「最新のソフトウェアと最新のハードウェア、この船は最先端の技術と効率的な運用を融合させ、業界のニーズに応えるCSOVの新しい時代を象徴しています」

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この船は最新技術が採用されるとともに、快適性も考慮して設計されており、クルーに快適な作業と生活環境を提供します。

Kongsberg Maritimeのウインドファーム支援船デザイン (UT 5519 DE 他)

グリーンエネルギーへの移行

IWS Skywalkerは現在、ドッガーバンクウインドファームで稼働しています。世界最大級のウィンドファームであり、今後数年間で大幅な成長が見込まれています。SSE (スコティッシュ・アンド・サザン・エナジー) のCSOVのマネージャーである ジョニー・グッディング氏が、このエキサイティングなプロジェクトと、CSOV が彼のチームの業務をどのように変革しているかについて詳しく説明します。

Jonny Gooding


「SSEは大規模なクリーンエネルギープロジェクトの最前線に立っており、ドッガーバンクは巨大です」とグッディング氏は語ります。「ドッガーバンクAはすでに1.2GWを発電しており、フェーズB、C、Dでさらに3.6GWを追加できる見込みです。600万世帯に電力を供給するのに十分な量になり、その規模は信じられないほどです。

ドッガーバンクAには95基のタービンがあり、BとCにはそれぞれ95〜100基のタービンが設置される予定です。これらは巨大なもので、モノパイルの基礎は海底深くに打ち込まれ、ブレードは水面から260メートルに達します」グッディング氏は続けます。

「このような巨大風車が林立するドッガーバンクでは、作業員の安全が最優先事項です。彼らは革新的なギャングウェイ、ウォーク・トゥ・ワーク(歩行式連絡橋)を使って風車にアクセスします。風車の作業員用出入口の高さは、設置場所や潮位によって変動しますが、通常は20~25メートルになり、彼らは風車に到着後、小型エレベーターを使用してそれぞれの作業エリアに移動します。

IWS Skywalker は、革新的な作業環境を提供します。私はこのプロジェクトのためにいくつかの船で時間を過ごしましたが、Skywalkerは驚異的です」と、彼は熱く語ります。

「この船は非常に静かで、居住空間も格別です。風車内での12時間の長いシフトを終えたクルーにとって、快適な居住空間は非常に重要です。彼らにはリラックスできる十分なスペース、食堂、交流の場、さらには娯楽室が用意されています。この船は、クルーの健康や船上の居住・労働環境を最優先に設計されており、士気や生産性の向上に大きく貢献しています。」

この船には、非常に効率的なクルー輸送システムが備わっています。「以前は、作業員は作業開始前に、小型の作業員輸送船(CTV)で2~3時間もの荒れた海での移動を強いられていました」グッディング氏は、こう当時を振り返ります。「しかし、Skywalkerはその状況を完全に刷新しました。想像してみてください。目覚めて朝食を取り、そのままギャングウェイを歩いて、数分で作業現場に到着することができるのです。これは本当に大きな改善です。」

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革新的なギャングウェイ、ウォーク・トゥ・ワークにより、船と洋上施設間の安全な移乗が確保されます。

精密な位置制御

「ギャングウェイは巨大なベルトコンベアのように機能し、技術者とその装備を風車の作業員用出入口へと運びます」と彼は説明します。「Kongsberg MaritimeのDPシステムは、この効率性を実現する鍵です。船舶が「DPモード」の時は、波の影響を受けずに正確な位置を維持します。これにより、ギャングウェイが風車にしっかりと接続され、技術者は安全に渡ることができます。

「このシステムはまた、船が波によって上下動する際にも積極的に補正を行います」と彼は強調します。「これにより、ギャングウェイが完璧に水平に保たれ、海の状態に関係なく安全で快適な移動が確保されます。さらに作業用の装備を台車に乗せることができるため、安全性がさらに高まります」グッディング氏は更に続けます。

「DPシステムは、ウォーク・トゥ・ワークで作業を行う当社の業務に不可欠です」「この最先端の技術は、洋上風力発電所のメンテナンスに革命をもたらします。安全で効率的な移動を支え、この大規模なクリーンエネルギープロジェクトの成功に直接貢献します」と彼は締めくくります。

ドッガーバンクウインドファームについて

SSEリニューアブルズは、現在建設中の世界最大の洋上プロジェクトであるドッガーバンクウインドファームの最前線に立っています。主導的な開発者および建設者として、SSEは巨大な事業の責任を負っています。

Dogger Bank

その規模は実に驚異的です。SSEは300基以上の風車を監督しており、各設備は北海から260メートルの高さにそびえ立っています。この高さはパリのエッフェル塔の高さとほぼ同じです。これらの巨大な風車は驚異的な3.6GWのクリーンエネルギーを生成します。これは450万世帯以上の電力需要を満たすのに十分な発電量です。